「現場に任せる」経営者になるということ

起業してから早14年が経ちました。
それまでの間、本当に多くの方々、とくに経営者層の方達を会う機会をいただき、14年会社をやっていてもまだまだ若造だなと感じます。
そして今まで出会ってきた経営者さんの何人かが同じ悩みを抱えていました。
それは「早く現場を離れて、手離れをしたい」ということ。
経営者さんの中には、「俺は死ぬまで現場にいるぞ!」という方もいらっしゃれば、「オーナー社長」として現場にすべてを任せ、自分は毎日の売上チェックをし、必要に応じて口や金を出す、という方もいらっしゃいます。
どっちが経営者として幸せなのかは、はっきりと分けることができません。
ですが、一定数の方は「現場を手離れして、オーナー社長になりたい」と考えていらっしゃいます。
ではどうしたら現場にすべてを任せ、自分はオーナーとしていられるのか、過去の経験をお話ししたいと思います。

とっても謎に満ちた経営陣

私は起業前にビリヤードとダーツを販売する会社に、ネットショップマスターとして在籍していました。
その会社は社長と専務が取締役としているのですが、社長という方は月に2回くらいしか会社に顔を見せない、普段何をしているのか分からない謎に満ちた方でした。
もっぱら専務が店舗の管理とか、用品の発注とかをしているのですが、こまかい事務的なことは事務のお姉さんか私がさばいていました。
専務は週の半分くらい会社にいるのですが、それ以外はとにかくいろんなところに外出する人でした。
当時複合カフェやダーツバー、イタリアンレストランなど、8店舗くらいを経営していましたが、経営陣が直接出向くのもそんなになく、毎日各店舗から上がってくる売上報告を集計して「この店舗はまだまだだな」とか「売上あげたなー」と一喜一憂している程度で、細かく突っ込むこともしませんでした。
とにかく普段何をしているのか、全然分からなかったのです。

突然下された「店舗抜き打ち点検」命令

入社してから1ヶ月経ち、だいぶ組織のことも理解し始めたとき、専務から「直営店舗の点検に行ってくれ」と言われ、何をすればいいかを聞いたところ「君がお客さんだったらという目線で店舗を見てきて。あとアルバイトスタッフからお店に関する聞き取りをしてきて」ということでしたので、とりあえずその店舗にこれから行く部長さんの車に飛び乗って直営店舗に向かいました。
この会社では毎月2回くらい、無作為に選んだ店舗に行ってお店の清潔具合とか、ビリヤード台の状況などを抜き打ち点検することになっていて、私が入社してからは私が主に担当することになりました。
店舗(=現場)のスタッフとしては「本社から来る人=恐い人」という認識があったので、店舗に到着して「本社のささがねですけど、店長います?」の一言で、私でも分かるほどパキッとした、なんとも言えない緊張した空気が流れました。
「え?今日?」とか「とうとう来たかー」という小声も聞こえてきましたが、とにかく店長を、ということで少し待ちました。
店長も急なことで落ち着かない表情であることは分かっていたので、「専務からの業務命令で、これからこの店舗の点検をします」と告げました。なんだか税務調査とか金融庁検査のようなそんな雰囲気でさえありましたが、店舗は営業中ですのでアルバイトスタッフにはそのまま業務を続けてもらい、正社員である店長さんだけ同行を求め、点検をしました。
化粧室、シャワーブース、ドリンクコーナー、各ブース、ビリヤード台、ダーツマシンなどの設備機器はもちろんのこと、用品販売のディスプレイ、照明の明暗、床などをチェックしていきました。
すべて回りましたがほぼ問題はなかったので、点検は無事に終了、専務にまとめたレポートを提出して「よくまとめてあるね、ありがとう」と受け取ってくれました。
本来であれば専務もすればいいのにどうしてしないんですか?という問いに対して「基本的にはね、店舗は店長に任せるんだよ。こっちはたまーに行ってちゃんとやってるかを見るだけでいい。だってもし店舗の状況が芳しくなかったら数字に出るからね。ただそれだけだよ」と教えてくれました。

物品の発注もバイトの採用も店長権限

この会社の直営店舗は、店長の権限が幅広く認められ、さまざまな物品の発注はもちろんアルバイトスタッフの面接・採用も店長に任せています。
そして店長は自分の店舗をどうしていきたいのか、明確なビジョンを本社に示し、それに対して何が必要なのかを経営陣に稟議して決定する、というフローが確立されていました。
これは考え方によってはリスキーなものかと思うのですが、社長と専務は「確かに会社の店舗だけど、自分の店舗だと思って回してもらわないとやる気にならないでしょ。だからあまり言わないんだよね」と。
さらに「もし店長が独立してこの店舗を続けたいというなら、喜んで売ってあげるよ。設備もそのまま使えばいい」と続けました。
なるほど、経営陣はこういう気持ちで店舗を増やし、店長に権限を広く認めることでお互いに切磋琢磨して店舗運営ができるのか、と目から鱗が落ちました。

現場に任せるポイント

社長と専務、そして現場の社員との間はまず前提条件として「信頼関係」がきちんと成り立っていることが、この会社にいてよく分かりました。
社長と専務は店舗開店のための金策や事務的な手続きそれから店舗設計などを担い、店舗ができたら現場のスタッフにすべて任せるという明確な業務の切り分けができていました。
そして社長と専務は日々の売上情報を蓄積して、次なる一手を考え、店舗と共有しブラシュアップするという経営モデルが出来上がっていました。
とあるスタイリストさんが

「経営者になるために、私はハサミを置いた」

とおっしゃっていたように、本当の意味での経営者になるためには自分の道具を置くことが大事なんだと考えます。
私でいえば「マウスを置く」ということでしょうか。
つまりこのようにまとめることができます。

  • 経営陣と現場スタッフの間には信頼関係が重要
  • 経営者は経営のことに集中し、現場に裁量権を広げる
  • 経営者になるなら自分の道具は置いていくこと

いかがでしょうか。
私自身も一時期、現場を離れようかと思っていましたが、まだまだそうもいかないようです。
とはいえ、コーディングやプログラミングのところはほとんど手離れしました。でも日々移り変わる技術の変化にはきちんとついていく努力はしているつもりです。

手離れをしたい経営者のみなさん、一時的でもいいので仕事を現場に任せてみませんか?

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